2012年7月20日金曜日
北戸蔦別岳へそして幌尻岳ピストン
7月17日
千呂露川登山口
先着の車一台 すでに出発無人
装備の最終点検、食糧のパック点検
川水でビールを冷やす。
1830時まだ尾根に日が当たって明るい。
明日の晴天を約束している。
7月18日
0215起床 昨夕作ったラップおにぎり二個と
簡単味噌汁で腹拵え。
0330車を片隅に寄せロック
0350ゲートを潜りいよいよ入山。
0435北電取水ダム
0500二ノ沢出会い
ゲートから取水ダムまでは管理車両用道路
取水ダムから二ノ沢出会いまでは古い林業作業道
幾分荒れたり流出したところもあるが明瞭な道
最近草刈され歩き易い。
0530二ノ沢標高921m
ここまで飛び石伝いの渡渉
登山靴で十分
明瞭なふみ跡とテープ
随分な人数の入山があるらしい。
まだ朝早いため登ってきた沢を撮っても
沢筋はなかなか写し辛い。
雪渓の最上端から上流は
水量は少ないが小滝が
50m以上連続してここからの遡上を困難にしている。
この地点で右の尾根に取り付く
ロープが設置してある急斜面を一登りで
やや傾斜が落ちる。
落ちるといっても日高特有の直登には変わりない
鹿も滑るらしく爪を滑らせた後がいくつも残っている。
0640 トッタの泉
斜面から地下水が湧出している。
流石に冷たくオイシイ。
しかしここからが本日登りの核心。
トッタの水を4L、2Lポリタンク2個満タン。
一気にザックは4㎏重量アップ。
稜線には水場はない。
かろうじて北戸蔦別頂上直下、糠平岳とのコルに小雪渓。
戸蔦別岳幌尻岳間の七つ沼カールの雪渓
よって、水はここから必要な分を担ぎあげなければならない。
もう30分くらい標高の高いところを予想していたのでなんだか余計水が重くなった。
まだ朝早く二ノ沢に陽が射しこまない分ましか。
ストックはザックに仕舞、両手両足の登りを
これでもかと続ける。
橄欖岩の糠平岳が見えたり見えなかったり。
振り返ると、先日登ったチロロ岳西峰が
やっと顔をだし、何とか元気を取り戻す。
ここからは展望が効きだし、両手両足にもなんとなく力が入る。
ずっと肝心な所では笛を吹いてきた。ルートの屈曲点手前、笹薮で見通しが効かないところ。
糠平岳直下、ややトラバース気味になり、野草が密生した地点に入った途端、猛烈な獣臭、これまでにない生臭さと吐気が来るような濃密な臭い溜り。
思わず笛を吹いた。
この時笛を吹いて正解だったのかぞっとした。
もし、直近にいたとした果たして熊はじっと隠れていてくれたかどうか。
居なかったから何事もなかったのか。
居て、笛で避けてくれたかのかどうか。
何れも答えはないが、兎に角すぐ近くに存在を感じつつ登った。
日高の熊の濃密な存在を初めて見にしみて感じた瞬間。
0830橄欖岩の岩場をアルミハシゴ二か所を越すと、糠平岳三角点。
ここで初めて、幌尻岳が姿を現す。
流石に日高の盟主、堂々として張りが大きい。
カールを大きく抱え、戸蔦別岳の鋭鋒も脇役にしか見えない。
遠いな。
遠い。
糠平岳から北戸蔦別山頂直下までいたる所お花畑が出現。
これには癒される。
これからの遠さも一時忘れて写真休憩。
0910 北戸蔦別岳山頂には、狭いながらテント二張り分のテン場がある。
すでに一張り、残りのテン場にテント設置。
00945 即、幌尻岳ピストンにかかる。
天は、ガスが厚くなり時々幌尻山頂が隠れる。
北戸蔦別岳から戸蔦別岳へは一旦大きく下り、
橄欖岩の中戸蔦別へ上り返し小さなくだりからさらに大きく登り返す。
頂上が見えるだけに、これを帰りにも登り返すのかと一寸うんざりする。
1045 戸蔦別岳山頂着。 そんな気分も、幌尻岳との吊り尾根、釣り尾根直下の七つ沼カールを望むと、「行くぞ」と気合が入る。
その気合いのせいか、意外と大きな下りと、カール側が切れ落ちた険悪な尾根もいつの間にか通過、幌尻岳への大登にかかっている。
七つ沼を振り返り振り返り、戸蔦別岳から南延びる尾根上のピークを、あれは神威岳か、あれがエサオマントッタベツか、
ということはあれがカムイエクか、などと立止まり立止まりでなかなか高度があがらない。
大登を登りきると、尾根は緩やかになりその最南端の幌尻の山頂が見える。
そこまでの稜線には、ハイマツとお花畑が交互にあらわれ、長い稜線歩きとなかなか近づかない山頂を紛らわしてくれる。
1230 幌尻岳山頂
日高の主脈から外れ単独法的に鎮座する幌尻岳。
その分、日高主脈の全貌、主脈の主だった山の置かれた場所が成程、成程そうかと妙に納得できるものになっている。
天気が良くてこれだけの展望が得られるまで、待って待って待ち続けて大正解。
北日高に入ったのが7/2
三日間天気が持ち、晴れるのを待つ。
そう決めてから16日間。
甲斐が有ったというもの。
粘り勝ち。
しかし、日高何処から見ても、何処にいても
その山の重なり、尾根の重畳たること類を見ない。
尾根は屈曲して次の頂へ、そこからまた逆戻りするがごとく屈曲に屈曲を重ね鋭鋒を次から次へと繋いで行く。
慎重に見極めながら山と山を楽しむ。
1305 幌尻岳山頂発
北戸蔦別岳山頂テン場まで3時間
すでに行動時間9時間。
疲れはない。日高主脈のど真ん中。
最高の天気。テンションは上がりっぱなし。
写真撮りまくり。その度の写真休憩。
その度の山への称賛。
1350 幌尻岳側七つ沼カール分岐
1410 戸蔦別岳側七つ沼カール分岐
1440 二度目の戸蔦別岳山頂
今日は七つ沼カールにテントは一張りもない。
雪解け水を溜めた沼が点々として静寂そのもの。
写す方向や高度が変わるたび撮る。
飽きもせず撮る。
これでもかと撮る。
背景に写る主脈のピークが
その度に変る。
ここからは、エサオが映る。
ここからはカムイエクがちょっとだけ。
時間は経つばかり。
流石に日高最高の人気の山。
今日は貸し切りとはいきません。
ツアー団体とも行き会う。
熟年夫婦とも行き会う。
その度、逆方向の登山へ
不思議な視線。
たまりかねて聞く人も。
北戸蔦別岳から往復します
おやまー、へー、なんと、そんな
反応は色々。それはそれで人それぞれ。
北戸蔦別への最後の登り、
余りに花が綺麗なので
カメラを近づけ接写体制に入ったその先に
バケツ半分はありそうな、
真っ黒な糞の一塊、熊糞。
居るんだやっぱり、今朝の熊かな。
これまでのテンションが一気に現実に引き戻される。
1540 北戸蔦別山頂テン場着
ご苦労さんでした。
12時間行動。
流石におぐったり。
しかし頭はピンピン、チカチカ、ショート気味。
良かった、来て良かった、見えてよかった、
歩けてよかった、流石幌尻岳。
もう一張りのおじさんからお声掛け
鹿児島から、羅臼行ったの、オプタテも
トムラウシは行ったの、そう、これからは
中と、南日高やるんだ、ぜひペテガリは行ってよ
良いよ、俺は胃はないし71歳、適当に登てっけど
あんたはすごいよ。
昨日俺は13時間かかって幌尻届かなかったもの。
結局七つ沼泊り。
熊か、掘り返しはいくつもあったな、
三匹くらいは居るんじゃないか。
明日1967峰へ行くの。
今日ピストンしたけど
新しい掘り返しがいくつもあったな。
しょうががないもの、熊のお家だもの。
などとお話をしてテントへ。
お箸を忘れハイマツの枯れ枝で
お箸づくり。
今日の夕食は
マーボ春雨二人前
アルファ米2合
ソーセージ一本
ラッキョウ少々
ビール350mmL2本
焼酎少々
いや重かったはずだ
ビール二本に焼酎だもの。
夕方から猛烈ガス。
明日の天気大丈夫。
おじささん曰く、
昨日もこうだった、大丈夫明日は晴れる。
御宣託を信じて、爆睡。
風は尾根越しに強く吹いている。
テントは風裏になっているので
少々バタバタする程度。
気温が妙に低下している。
おじさん曰く、
北だな、南西か南がかかると暖かいだが
今夜も寒いぞ、昨夜も寒かったもの。
シュラフ無し、シュラフカバーに雨がっぱ。
寝れるもんです。だって爆睡だもの。
夜中二時、自然に目が覚め外に顔を出すと
満天の星。星だらけ、
こうしてはおられません。
1967峰ピストン。
おじさんには展望が無いといきません
と言ったがこの天気では断る理由はありません。
しかし、簡単に言うけど5時間かかるんだと。
幌尻岳ピストンとあんまり変わらない。
太陽がようやく顔を出そうとしている。
水平線の雲の縁が赤く、橙に、そして金色に
微妙に変化をつけて変わっていく。
山もその色に合わせ次第に輪郭がはっきりする。
至福
ここにいてこその一瞬
寒さを忘れてしまう。
気温6℃。
ピーンとした朝
そして山また山。
よくぞここまで
見せてくれます。
行きましょう1967峰。
1967峰は伏美岳からは単純な一峰にしか見えなかった。
しかし、ここ北戸蔦別岳から見ると
岩峰である。
日高に似合わない岩の連なりがある.
大石を積み重ねたような重量感がたっぷりである。
撮っても撮っても飽きない
七つ沼カール
吊り尾根からミリ幌尻岳は遠い
まだ下りきってないもの
それでも又七つ沼カールを撮ってしまう
まだまだ遠い
幌尻に登り始めても七つ沼カール
カールを知らないわけじゃないけどやっぱりどこか雰囲気が違う
こんなに高くなって全貌が分かる
戸蔦別も脇役か
ようやく幌尻岳の山頂が見えた
戸蔦別岳の背後に
明日登る1967峰
幌尻岳山頂、1300時では誰も居ません
遥かにエサオマン、カムイエク、コイカク
やっと来た
待ちに待った
幌尻岳山頂
でもあっけなかった
下山途中で振り返る幌尻岳山頂
そしてカール
七つ沼
いつまでも七つ沼
今日はテント一張りもない
戸蔦別岳を超えると、幌尻岳山荘分岐、まだ一時間かかる
幌尻岳がこんなに遠くなった
戸蔦別直下でこんな大きな熊糞、バケツ半分くらいありそう
今日朝から癒された花々
糠平岳から幌尻岳までお花畑の連続
テントに入って晩飯
ビールが五臓六腑
勝るものなし
重かったもの
マーボ春雨辛口
七味追加
焼酎七夕黒
あるんだセブンイレブンだったかファミマだったか
箸を忘れってハイマツの枯れ枝で箸づくり
出来上がればこれも野趣か
明ければ上々の天気
太陽の力強さを感じる瞬間
ほら来た
きょうもがんばるぞ
やっぱり荘厳そのもの
他に言葉はありません
雲海に浮かぶ山群を見ればなおさら
てっぺんのテントに泊まればこそのご褒美、
さあ、これから1967峰に向けて、慎重に、安全に、そして楽しもう。
続きは明日。
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お疲れ様です。いやー凄いですね。本当に、凄いです。
返信削除写真や文章ではピストンしたとわかりますが、時間と労力を考えると信じられないです。
それも装備は重いわけで、考えるだけでも恐ろしいです。
しかし、それを上回るだけの化粧は先輩一人の宝物。私達は先輩の肉眼とカメラを通した映像とレポートで、疑似体験!
う~んそれにしても凄いです。山、花、澤、朝日、夕日、の写真に大大感動!!
追伸、膝は大丈夫ですか?
下りてきて歩く分には全く痛みなし。全くどうなっているんだといいたい。
返信削除次の山行に行ってからしか痛みが出るかどうかわからない。厄介だな。
7月2日に日高に入ってから、二週間を越えて粘っての下山。
流石に、報告にも力が入ります。
あの高みに行ってみないと日高は語れないかもしれない。
二泊三日山行を、一泊二日で済ますことなんか何の自慢にもならない。
高みに立って感じたことが一番ではないか。一泊だろうが二泊だろうが。
自らの力の及ぶ範囲で日高を感じたことが一番うれしい。